敵は分解していく
2010年 04月 22日
息せき切って伝令が司令部へ走り込む。
「我が軍を支援する国民の数が減少しています。このままでは運び込まれる糧食が不足します」。
「後方部隊長達が作戦を巡って対立しています」。
「作戦司令官が後方を優先して前線に来ません」。
「部隊長として不適任だという指摘が複数の部隊長にあります」。
「作戦司令官が軍需物資を隠匿しているという噂が広がっています」。
せっかく民主軍が内部から崩れるかもしれないという時、知恵のない自民軍は三々五々バラバラと分裂していく。
民主軍より数で劣る自民軍は敵と対決するには一致団結しなければならない。
しかし、そんな事よりも自分の立場を優先する自民軍の部隊長達は戦線を離脱していく。
別軍を組織して民主軍への有効な攻撃を考える作戦なのか。
自民軍と連携して民主軍を叩き潰すつもりか。
今日、自民軍参謀総長になれないと判断した人物が離党した。
離党前日に取材に応じた自民軍部隊長は「あの人は人望が無いから」と一蹴する。
彼が入営する改革軍関係者は「政党交付金の関係だ」と解説した。
つまり、新しい政党を立ち上げてもすぐには政党交付金は貰えない。
それが無ければ司令部の設置や軍用食料も買えない。
そこで既設の軍隊に入る事になったらしい。
そして、いきなり司令官職に就く。
いくら小さくても「長」になれる。
一国の城主となる彼の野望が尽きる事は無い……。
ンッ、野望が尽きる事のない男達、民主軍作戦司令官もそうだ。
こんな人達しか野戦司令官にならないようではどっちもどっちか。
どちらにしても、黙ってみていれば崩壊したかもしれない敵軍に、塩を一生懸命送り届けているようで滑稽だ。